谷川 和穂 (たにかわ かずお) 元防衛庁長官、元法務大臣、元全国保護司連盟会長 <早すぎる日本の人口高齢化> 日本の人口高齢化率が、高齢社会への入り口とされる7%を超えたのは1970年。 これを境に高齢化率は顕著に上昇をはじめ2005年には20.2%とわずか35年間で3倍近い水準に達した。欧米先進国と比較しても、その異例さは際立っている。 しかも日本の場合には、20〜30歳代の人口は2005年からのこれからの45年間で51.6%も減少し(社人研推計)、その年代の人口はこれから45年間で現在の半分以下になるという。それに対して、フランスでは5.0%の減少、ドイツでも27.2%、イギリスでは逆に1.5%の増加であり、アメリカでは何と30.5%も増加すると予測されている(国連推計)。 もともと1980年代までの日本は、先進国の中でも最も高齢化の低い、いわば極めて若い人口構造を持った国だった。それがこれほどの変化を起している国となったのである。 <都市と地方では高齢化そのものが違う> 同じ高齢化でも、日本で注目すべきは高齢者数の増加率。これから25年後の2035年には東京圏では75.7%も増加するのに対し、島根県ではわずか2.6%の増加に過ぎない(社人研推計)。20〜30歳代の若者の減少率が驚くほど違うのである。島根県では若者の減少率がほとんど変わらないのに、東京圏とか大都市圏では高齢者人口が75%以上も増加するということは、現在の高齢者に対する福祉水準を維持しようとすれば、老人ホームやデイ・サービスの施設を現状よりも75%以上も増やさなければならないということにつながる。高齢者社会だからある程度の負担増は止むを得ないのではないかと、考えているだけでよいのだろうか。東京圏においては、現在の財政サービスの水準を維持しようとするだけで、働く人一人当たりの税収を年々かなりの速さで引き上げざるを得ないだろう。ところが、20〜30歳代の弱者人口は2005年からの45年間で50%以上も減少し、現在の半分以下になるということとなると話はそう簡単ではない。 <問題そのものを直視し、出来ることから直ちにをつけなければならない> 今後の人口減少社会において、よりいっそう厳しい環境におかれるのは大都市地域。しかも今後、子供を生む可能性の高い年代の女性人口が激減する為、出生率がほぼ現在の水準に維持されたとしても、2035年にはそれは15万人までに縮小されるといわれている。 地方からの人口が流出する年齢は就学・就職の20才前後に集中していた、総じて70年代後半から90年代前半、大都市経済においてサービス業などの第三次産業が急速に拡大した時期であった。 1970年代、財政破綻に陥ったニューヨーク市では人口の13%、約100万人の住民が流出したことがある。背景にアメリカ経済の不振がある。そのセンターたるニューヨーク市への打撃がそれだけ大きかったということがあったのだろう。その頃、マンハッタンを取り巻く環状高架の都市高速道路がウエストサイドの一角で路盤が崩れ落ち、その上に雪が積もった写真が新聞の一面を飾った。 日本の場合は、2070年代の前半までは日本全体としても急速な高齢化が続く。年々悪化を続ける財政状態が少なくとも70年間は続くのである。 <環境・医療等の社会的重要テーマについては民間企業の働きを最重要に考えるべきだ> 新エネルギー・省エネルギー・再生エネルギー・さらに排出権などの事業について公益分野と強調して動き出している民間企業が出てきている。環境・医療等の社会的な重要テーマについて様々な事業をプロデュースし、エネルギー効率の向上、省資源化の徹底、市民ライフスタイルの転換などを総合的・複合的に組み合わせた環境配慮型の都市を設計しようとする動きがそれだ。 当然のことながら、この動きの中には、環境・医療等社会的重要テーマがこれからの大きな問題としてとりあげている。 もとJリーガーの松田直樹選手が練習中に突然に心筋梗塞にみまわれ、お亡くなりになられた報道は日頃から元気に活躍されていた様子から驚きと悲しみをもって広く伝えられた。このような突然の心肺停止は日本国内だけでも11万5250人(2010年)も報告されている。そこで、突然の心肺停止に最も大切な適切な一時救命処置が出来る環境、CPR&AEDマスター、救急ほっとラインの信頼できる安心な社会を築く為、「日本生活安全基盤機構」を立ち上げることとなった。 救急医療の大きな問題としては、救急患者が速やかに医療施設に収容されることが大切。平成22年度の救急搬送数は約500万人、国民25人に一人が救急隊員等によって搬送された数となっている。平成35年にはおそらくこの数は2割程度は増加するだろうと予測されている。心筋梗塞になった人の脳の血液酸素割合が25%では脳の回復の例がないことから如何に早く心肺蘇生を受けるかで社会復帰が出来るかが決まるもといわれている。(医者にTime is Brainだと言われたことがある) CPR&AEDマスター、救急ほっとラインは対応できる社会建設を日々の救急医療機関(ER)でご活躍の医療の先生方の真に厳しい連日の姿を少しでもお手助けするべく我が国における緊急医療会を代表する「一般社団法人医療総合研究機構」、さらに日本緊急医学会、及び日本臨床医療研究医学会の活動を支援させていただくべく「日本生活安全基盤機構」(SLOJ)が組織されることとなったのである。 国民が幸福な社会生活を営む上において生命・心身の安全が確保されることが最優先という認識の下に心ある多くの方々がこれからの日本の社会において迫り来る救急医療の重要性につきご理解いただければまことに幸いである。
Copyright (C)
Safety Life Organization Japan., All Rights Reserved
|